ショッピングやキャッシングで便利なクレジットカードですが、使い方には注意が必要です。あまり無計画に使うと、多重債務で返済に困窮することになってしまいます。実際に、クレジットカードの使い過ぎで返済が困難になってしまう人は少なくありません。
借金苦から抜け出す方法として普及している債務整理は、クレジットカードの借金にも利用できます。ただし、クレジットカードの債務を整理する場合は、その後の影響についても把握しておかなければなりません。こちらでは、債務整理の代表的なメリットや、債務整理後のクレジットカードへの影響についてお話しします。
返済に困ったときに債務整理をするメリット
借金をしたとしても、現実的に返済をしていけるのであれば問題はありません。しかし、借金の件数や額によっては、通常の生活を維持しながら返済していくのが難しい場合もあります。そうした場合に利用されるのが債務整理です。
債務整理を行うと、借金の額が減額され返済が楽になります。実際の借金減額効果は実行する債務整理の種類にもよって異なりますが、利息カット、もしくは借金の額そのものが減額され、返済の負担が大幅に軽減されるのです。救済効果が最も強力な自己破産では、返済義務が免責、つまり借金の額そのものがゼロになります。
また、返済の期間についても見直されます。債権者との交渉により新しい返済計画を立てる任意整理では、3~5年で返済期間が設定されるケースが一般的です。個人再生でも、最長5年まで返済期間を延ばすことができます。
クレジットカードの利用も、決済と返済を繰り返していくという意味では短いスパンの借金です。ショッピング利用が頻繁になると、多重債務に苦しめられてしまうこともあります。リボ払いやカードローンによって、返済が困難な状況に陥ってしまうことも少なくありません。
上述したとおり債務整理は借金苦に対する救済措置であるため、クレカの返済に困っている場合にも利用できます。クレジットカードはショッピング料金の決済方法として利用できるため、最も一般的な借金といえるかもしれません。計画的に利用するのが一番ではありますが、もし返済が困難なほどの多重債務を抱えてしまった場合は、生活の立て直しのために債務整理を検討しましょう。
以下では、債務整理の種類ごとに特徴的なメリットをご案内します。
任意整理
任意整理は貸金業者との和解により利息カットをする手続きです。借金の減額、支払い期間の延長によって、債務者にとって無理のない返済を目指します。裁判所が関与しないため法的な効力はありませんが、整理する借金を選べる、国の機関紙である官報に氏名・住所が掲載されないといった任意整理特有のメリットがあります。
ただし、あくまで返済を目的とした手続きのため安定した収入がなければ利用できません。そのため、生活保護を受けている状態では推奨されておらず、生活保護受給者から任意整理のサポートを依頼されても断る弁護士が多いようです。一方で、配偶者の収入を返済に充てても問題ないため、主婦の方が夫の収入で返済していくケースもあります。
個人再生
個人再生は借金の大幅な減額、支払い期間の延長により、負担を大きく軽減した分割払いができる手続きです。民事再生法に基づいた手続きのうち、法人ではなく個人を対象としたものを指します。認可されると、借金の額は5分の1~10分の1に圧縮されます。支払い期間は3~5年で調整されます。任意整理とは異なり裁判所を通した法的手続きであるため、認可された場合債権者は従わなければなりません。個人再生を行う場合、保有しているすべての債務が整理対象になります。また、官報に住所・氏名が記載されるため、本人の意向に関わらず債務整理を行った事実が外部に知られてしまう可能性があります。
自己破産
自己破産は借金の返済義務そのものをなくす手続きです。いくら借金があったとしても、認可されれば返済額はゼロになります。債務整理のなかでは最も強い減額効果を持つ手続きです。個人再生と同じく裁判所を介した手続きであるため、法的効力を有しています。すべての債務が整理対象となる点、官報に情報が記載される点などは個人再生と同じです。
債務整理をしたクレジットカードはどうなる?
クレジットカードの返済に困窮した場合にも利用できる債務整理ですが、その後クレジットカードはどうなってしまうのでしょうか? 債務整理をしてもクレジットカードをそのまま利用できるのであれば、クレジットカード契約者にとって一方的に有利であり、クレジットカード会社にとってはリスクでしかありません。債務整理を行った場合、クレジットカードの契約者は相応のデメリットを被ることになります。
結論から申し上げると、債務整理をしたクレジットカードは強制解約となり、それ以降使うことができません。厳密には、債務整理の意向を伝える受任通知が弁護士からクレジットカード会社へ送られた時点で強制解約となります。債務整理が成功するかは債権者との和解ができるか、また裁判所の判断によりますが、クレジットカードの強制解約は債務整理の成否に関わりません。
強制解約されたクレジットカードに関しては、ショッピング枠、キャッシング枠ともに利用できなくなります。多くのクレジットカード会社はショッピング枠、キャッシング枠を区別した債務整理手続きを受け付けていません。また、補修してしたポイントサービス、マイルサービスなども、強制解約された時点で失効となります。
そのため、基本的には債務整理を決断した時点でクレジットカードが使えなくなることを覚悟する必要があります。もちろん、支払いに困窮して延滞を繰り返した場合も将来的には強制解約となってしまうでしょう。最終的には督促状が届き、最悪の場合は裁判に持ち込まれることもあるため、早い段階で債務整理を検討するのが賢明です。
債務整理をすると他のクレジットカードが使えなくなる?
債務整理手続きのひとつである任意整理では、整理する借金を任意に選ぶことができます。クレジットカードを整理対象から外すことで、クレジットカードを残すことも可能です。しかし、この場合もそのクレジットカードを使い続けられるとは限りません。
債務整理を行うと選んだ手続き内容に関わらず、信用情報機関のブラックリストに登録されます。クレジットカード会社は契約者の返済能力を確認するため、契約者の信用情報を参照することがあります。契約者がブラックリストに登録されている事実が確認されると、返済能力が疑われて強制解約になってしまうことがあるのです。
信用情報を確認するタイミングはクレジットカード会社によって異なります。代表的なのは以下のようなタイミングです。
- 支払額が多いとき
- キャッシングが頻繁に利用されているとき
- 支払い延滞が起きたとき
- 契約更新
- 貸金業法で決められたタイミング(法定途上与信)
未使用のカードについては与信が行われないことも多いため、債務整理をしてもしばらくは使える可能性があります。原則として、債務整理したことを契約者からクレジットカード会社に伝える義務はありません。店舗のポイントサービスのために作って放置しておいた未使用のクレジットカードなどがあれば、ひとまず使えるかどうか確認してみるのもひとつの方法です。
ただし、契約更新時はほぼ例外なく信用情報が参照されます。過去に債務整理をしており、このタイミングでまだブラックリストに登録されていれば、ほぼ間違いなくクレジットカードは強制解約になるでしょう。こうした理由から、クレジットカードを債務整理の対象外にしたとしても、将来的には使えなくなってしまうのです。
債務整理をするとクレジットカードが作れない?
クレジットカードを契約する際には、クレジットカード会社による審査が行われます。この際に、申込者の返済能力に問題がないか確認するために参照するのが、信用情報機関が保有する信用情報です。この時点でブラックリストに登録されていることがわかると、審査通過は難しくなってしまいます。
日本の信用情報機関は、主にクレジットカード会社が加盟している株式会社シー・アイ・シー(CIC)、消費者金融系が中心的に加盟している株式会社日本信用情報機構(JICC)、銀行の加盟が多い全国銀行個人信用情報センター(KSC)の3社。それぞれは個別に顧客の信用情報を管理している一方、情報共有を行っています。ブラックリストの登録情報についても、3社間で共有しているのです。
つまり、過去に整理したのが消費者金融からの借金であっても銀行融資であっても、債務整理をした後はクレジットカードの契約が難しくなります。これは、債務整理をするうえで知っておかなければならない代表的なデメリットのひとつです。
ただし、ブラックリスト入りには期間があり、将来的には解除されます。ブラックリストに入っていない状態であれば、クレジットカードを作ることも可能です。
債務整理をしたらいつからクレジットカードが作成できる?
債務整理後はクレジットカードの契約ができなくなりますが、この状況は無期限で続くわけではありません。その後に金融事故を起こさなければ、ブラックリスト登録は一定期間で解除されます。ブラックリストが解除されれば、信用情報がクリーンな人と同じ条件でクレジットカードの審査を受けられるようになります。
一般的な債務整理では完済から5年間後、自己破産では10年間経過後にブラックリスト入りが解除されます。決して短い期間ではありませんが、債務整理後にクレジットカードを作成したければこの年月が経過するのを待ちましょう。正確な起算日については弁護士の間でも意見が分かれるため、おおよその目安として覚えておいてください。
ただし、上述したのはあくまでも信用情報機関のブラックリストが解除されるまでの期間です。クレジットカード会社は、信用情報機関が保有する情報以外にも自社で独自に顧客の情報を管理しています。過去に支払い滞納や債務整理したクレジットカード会社は、上述した期間が明けても契約できないケースがあります。これが、通称「自社ブラック」と呼ばれる状態です。
債務整理をした後にクレジットカードを作るコツ
債務整理をしたとしても、クレジットカードを作ることは可能です。スムーズにクレジットカードを作るためのコツについておさえておきましょう。
まずは、過去に行った債務整理ごとにブラックリスト登録期間を把握しておくことが大切です。上述したとおり債務整理後から5年、もしくは10年の期間がかかります。起算日を正確に知るのは難しいので、あくまで目安として考えてください。
現在の自分の信用情報を知るためには、信用情報機関に問い合わせてみましょう。各信用情報機関は、信用情報の開示サービスを行っています。ブラックリストから抜けていれば、事故履歴がなくクリーンな信用情報になっているはずです。
信用情報は500~1,000円の費用で確認できます。申請すれば、現在の信用情報が記載された書面が届きます。CICとJICCはインターネットでの情報公開サービスも行っていますので、早めに信用情報を確認したい場合はこちらを利用してみましょう。
信用情報がクリーンであれば、クレジットカードの審査に通過する見込みが生まれます。信用情報は複数回照会しただけで不審な履歴として残り、クレジットカードの審査で不利になってしまうことがあるため、ブラックリストを抜けるタイミングが不明確な状態で闇雲にクレジットカードを申し込むのはおすすめできません。正確に自分の信用情報を把握し、確実なタイミングで申し込むことが大切です。
また、上述したとおりクレジットカード会社は自社のブラックリストを管理している場合があります。そのため、過去に債務整理を行ったカードの会社や問題を起こしたことがある会社は避けましょう。取引経験のないカード会社に申し込むのが安全です。
単に決済で使うカードが欲しいのであれば、デビットカードや家族カードを持つという選択肢もあります。デビットカードは銀行口座と直結してすぐに引き落としが行われるため、発行の際に審査がありません。家族カードはクレジットカードに追加では発行できるカードであり、審査対象となるのは契約者本人の信用情報であるため家族の信用情報の事故履歴がなければ問題なく発行できます。
将来にクレジットカードを再契約することを見据えて債務整理と行う場合は、あらかじめ弁護士や司法書士に相談しておくことをおすすめします。ブラックリスト入りが解除される時期も含めて詳細で正確なガイダンスが受けられるはずです。一般的な弁護士事務所は相談を無料で受け付けていますので、債務整理を検討している方であればまず問い合わせてみてはいかがでしょうか。