任意整理は、債務整理手続きの中で最も利用されることが多い手続きです。借金を整理すること、と何となくイメージがあるかと思いますが今回は任意整理とは何なのか、法律の専門家が解説します。
任意整理って?
任意整理とは、裁判所を介さず、弁護士がお金の借入先である債権者と話し合いで交渉をし、将来の利息をカットしたうえ,長期の分割(48ヶ月〜60ヶ月)を内容とする和解を成立させる手続きです。これにより支払い金額を減らしたり、督促を止めたりすることができるのです。
過払い金請求とは異なりますが、任意整理の手続きを進めていくうえで弁護士であれば過払い金の有無も判断できます。
利息制限法による引き直し計算を行った結果、過払い金が発生している場合には、過去に払い過ぎているお金を借金に当ててから返済の交渉をします。
話し合いの結果,借金の支払総額と分割払い回数が決まれば,業者との間で和解書を取り交わします。あとは,この和解書の条件にしたがって支払うだけです。
任意整理のメリットは?
任意整理は、債務整理の中で最も簡単に手続きが進められメリットデメリットがあります。そのメリットは大きく分けて3つあります。
1つ目は、「将来にかかる利息がカットできる」ということです。
利息というのは銀行も貸金業者もあまり明確にしてくれるものではありません。
ご相談に来られる方はほぼ全員の方が、利息がいくらか細かくは把握していません。銀行や貸金業者から月末までに、●万円返済してください。という表示がなされるのみで、返済金額のうち、元金がいくら、利息がいくら、という表記はなく、みなさんとりあえず月末の支払いを凌ぐために払っている方がほとんどです。
「利息 シミュレーション」「返済 シミュレーション」と検索していただければ大手貸金業者のページが該当すると思いますが、そこには100万円を借り入れた場合、151万円を5年間で返していただく、との記載があります。
これだけでも恐ろしいですが、これはあくまで返済のみした場合です。新たに借り入れしない場合です。ただでさえ返済は借りた金額の1.5倍になるのに加えて新たに借り入れすればそれ以上の利息を払うことになります。
毎月返済できているけど実はまた借りてしまって数年ずっと限度額いっぱいのままです。という方が一番危険です。
任意整理を行えば弁護士がお金の借入先である債権者と裁判外で交渉をし、将来の利息をカットするので和解した段階で返済総額が確定し、それ以降その金額が増えることはありません。(遅延してしまった場合は除く)
つまり、支払った分が全額借金に充当されるので、早期にかつ確実に完済できるのです。
2つ目は、「終わりの見える返済計画が立てられる」ということです。
借金は今や銀行でも芸能人を起用し、気軽に身近に感じられる様になってきていると思いますが、利息というものは恐ろしいものです。法律を守った利息(貸金業法)で15%から20%の利息を付すことは許されているからです。
先述の通り、いつまでにいくら払えば自分の借金が完済できるのか、これを把握している方が本当に少ないです。
任意整理を行えば、いつまでにいくら払えば借金がなくなるかは明確です。例えば100万円の借金を48ヶ月(4年間)で返すという和解となれば和解後からは利息がかかりません。毎月月末に債権者の指定された口座へ約2万円振り込んでいれば48ヶ月後に終了するということです。
先述の貸金業者の返済シミュレーションと比べてみていかがでしょうか。これは闇雲に何年も利息とともに返し続けるよりも金額も期間もとても短くなり、心理的にも楽になります。
3つ目は、「任意整理をすると督促のハガキや連絡(電話・メール)が止まるので家族に内緒で進められる」ということです。
ご相談にこられる方の多くは複数の貸金業者からの借り入れがあるため、どこにいくら返済すればいいのかの確認が漏れてしまい、家に督促のハガキや電話連絡がきて家族にバレてしまいそう、と悩んでいる方がたくさんいらっしゃいます。ほとんどの方が同居の家族に内緒で借り入れしています。
債務の整理を司法書士や弁護士に依頼をすれば、貸金業者はその専門家が窓口となるので、直接あなたに郵送や連絡することはできなくなります。
任意整理の手続き後は和解金を返済をするだけになりますので、家族に内緒のまま進めることができます。また弁護士であれば、本人に代わって支払いの代行もしてくれます。
メリットは他にもいくつもありますが、借金の状況によってベストな対応は人によって様々です。シン・イストワール法律事務所では借金の電話相談は無料で行っております。お気軽にお問い合わせください。
任意整理のデメリットは?
では、任意整理のデメリットについても見ていきましょう。任意整理のデメリットは大きく分けると2つあります。
1つ目は、「信用情報に傷がついてしまう(ブラックリストに載ってしまう)」ということです。
ご相談いただく方の中で一番懸念される声が多いのもこのブラックリストです。任意整理をして和解した金額を「全額返し終わってから」5−7年の間はローンが通らなくなってしまうと言われています。(収入や年齢など貸金業者が判断するので期間に関しては人によって大きく差があります。)
借金の整理をすれば、信用情報機関の信用情報に事故情報が載る。いわゆる「ブラックリストに載る」というデメリット、もちろんブラックリストに好んで載りたいという人なんているはずがありません。
「ブラックリストに載る」というと、恐ろしいイメージがあるかもしれません。ただご相談いただくうえで、ブラックリストに載るデメリットって実はそこまで大きくないということを説明させて頂いております。
ブラックリストに載るということがどういうことか、という本質を考える必要があります。
繰り返しになりますが任意整理をすることの大きなデメリットは融資(ローン)が受けづらくなることです。ブラックリストを恐れ、限度額いっぱいの借金をそのままにしている方が本当に多くいらっしゃいますが、実は本末転倒なのです。
なぜなら借金整理をしようがしまいが、長期間消費者金融で限度額いっぱいの借り入れがある人はローンがほとんど通りません。(住宅ローンを組む時に銀行に借金は全部返してください、と言われる話をよく耳にしませんか?)
借り入れが複数社ある中でブラックリストを気にして高額な利息だけを返済し続けていて元金が全く減らなければ永遠に借金問題は解決しません。
そしてローンを組めないということは、実質、ご自身の収入の中で生活をやりくりすることになります。借り入れできる金額は貯金ではありません。借金です。ご自身の収入の中からでしかお金は使えないので、結果的に健全な収支計画が立てられます。 お金を借りない、借りられない生活って実は全く悪い事ではないのです。
2つ目は、「保証人に迷惑がかかる」ということです。
任意整理をすると、本人には取立行為が無くなりますが、保証人はこの限りではありません。保証人がいる借り入れで任意整理をする場合、保証人に請求が行くことになります。
保証人がいる借金を整理する時は、保証人の方と話し合い、保証人の方に返済してもらうか、保証人の方も任意整理を行うなどの対応が必要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。借金の整理を法律の専門家に依頼することは、もう人生の終わりの様なイメージを持たれている方も多いと思いますが、見方を変えれば、ずっと悩んでいた借金と決別できる良い機会なのです。
どの債務整理をすればよいのかわからないという人は、一度専門家である弁護士や司法書士事務所を利用してみましょう。
(なお、司法書士は140万円を超える借金については、法律上代理権(交渉権)がありませんので、ご注意ください。)