1.エポスの過払い金が発生する場合
株式会社エポスカードは株式会社マルイグループの子会社です。2004年10月、それまで株式会社丸井カードが行っていたカード事業(マルイカード)をエポスカードが承継したため、マルイカードはエポスカードに名称変更されました。
エポスカードはマルイでのショッピングに利用されていますが、キャッシング機能もついています。エポスカードは平成19年(2007年)3月までは違法な金利(27%)での貸付を行っていたため、平成19年3月以前からエポスでキャッシングを利用していた方は過払い金が発生している可能性が高いといえます。
また、株式会社丸井カードは、2014年に株式会社ゼロファーストを吸収合併し、ゼロファーストが発行していたエムワンカードの管理もエポスカードが行うようになりました。そのため、ゼロファースト(エムワンカード)の過払い金についても、エポスカードに請求することになります。
ゼロファーストも利息制限法が定める上限金利よりも高い27.0%という金利で貸し付けしていましたが、平成19年(2007年)4月16日に上限金利を「20.0%以内」へ変更しました。
エポスカードに対する過払い金返還請求が可能かどうかをまとめると、以下のようになります。
- 2007年(平成19年)3月15日以前からエポスカード(マルイカード)でキャッシングを利用していた方
- ゼロファーストで2007年(平成19年)4月15日以前にキャッシングを利用していた方
ただし、エポスカードで買い物をした場合には、過払い金は発生しません。これらのショッピング利用分は貸付金ではなく「立替金」であり、支払った「分割手数料」も利息ではないことから過払い金というものが発生しないのです。
また、過払い金は完済した時から10年経つと時効により消滅してしまいます。よって完済していないか、もしくは完済日から10年以内であれば過払い金返還請求が可能です。
2.過払い金返還請求をする場合の注意点
エポスカードに対し過払い金返還請求する際には、以下の点に注意が必要です。
⑴平成9年以前の取引履歴が開示されない
エポスカードは平成9年以前(場合によっては平成7年以前)の取引履歴を開示しません。開示されない期間の取引について過払い金返還請求をするには、推定計算という方法もありますが当時のATMでの明細書もしくは借入や返済についての通帳の記載(一部でもよい)などが必要となります。なお、推定計算の詳しい方法については当事務所までお問い合わせください。
⑵支払い途中で過払い金返還請求をした場合には信用情報に載る
エポスカードとの取引で約定債務があり、現在、支払い途中の状態で過払い金返還請求すると基本的には信用情報に載ってしまいます。ただ、キャッシング残があり、引き直し計算をした結果、過払い金が発生しているような場合には信用情報に載ることはありません。なぜなら、適法な利息計算をした結果、過払いになるということは、そのキャッシング取引については、そもそも債務は無かったといえるからです。
⑶過払い金はショッピング残債務と相殺される
エポスカードでショッピングの利用がある場合には、キャッシングで発生する過払い金はショッピングの残高(債務)と相殺されることになります。ショッピング取引はキャッシング取引とは別個の取引だからです。これは他の信販会社についても同じです。
よって、ショッピング利用分の約定債務が残っている場合、キャッシングで発生した過払い金で相殺してもまだ残債務が残ってしまう場合には、やはり信用情報に載ってしまいます。
⑷エポスカードとゼロファーストは別個の取引
ゼロファーストの過払い金は、エポスカードに対して返還請求するということは前述のとおりです。
すなわち、キャッシングで発生した過払い金より、お買い物の残高のほうが多いケースでは、ブラックリストになる可能性もあるので注意が必要です。
また、ゼロファーストで支払いが残っている方については、エポスカードを完済していても、エポスカードの過払い金とゼロファーストの支払いを相殺することになります。相殺の結果ゼロファーストの支払いのほうが多いケースではブラックリストの危険があるので注意が必要でしょう。
⑸ スルガ銀行の保証会社である
エポスカードはスルガ銀行の銀行カードローン(リザーブドプランカード)の保証会社になっています。保証会社とは返済が延滞した際に借主の代わりに全額を支払ってくれる(代位弁済といいます)会社のことです。よって、スルガ銀行のカードローンの返済を延滞している場合には、代位弁済したエポスが銀行カードローンの残債務を請求(求償)してくるので、エポスカードの過払い金はこの請求分と相殺される可能性がありますので注意が必要です。
また、上記のようなエポスカードとスルガ銀行の保証関係から、エポスカードに過払い金返還請求をすると「リザーブドプランカード」の利用に支障が出るおそれがあります。
3.過払請求に対するエポスの対応
過払い金返還請求に対するカード会社の対応は、各会社によってさまざまです。エポスは過払い金返還請求については「良心的な対応」をする会社といえ、交渉についても比較的スムーズです。和解後、平均2ヵ月程度で、エポスから過払い金が振り込まれます。
また、エポスはマルイグループの子会社で経営は安定していますので、倒産等のリスクは低く過払い金の回収率も良好といます。
4.回収までにかかる期間・回収率
⑴ 回収の方法
過払い金返還請求をすれば、カード会社などがそれをそのまま支払うとは限りません。したがって過払い金返還請求をした後、相手方の会社と返還額や支払日について交渉をする必要があるのです。ここで交渉の方法は2つあります。
1つは、裁判を提起したうえで、その手続きの中で解決する方法。もう1つは、裁判を介さずに話し合いで解決する方法(任意交渉)です。前者では、判決を得て強制的に過払い金を支払わせる場合と返還額や支払日について当事者で合意する場合(訴訟上の和解)の2通りあります。通常、過払い金返還請求を求める裁判では、訴訟上の和解で終わる場合がほとんどです。結局、裁判をしてもしなくても、相手方会社と合意して終結するのが一般的ということになります。
ここで、裁判をした場合(訴訟上の和解)としない場合(任意交渉)との違いについていうと、一般的に,任意交渉で解決した方が回収までにかかる期間は短く済む反面、過払い金の返還率は低くなり、他方、裁判をしてその中で交渉すると手続きにかかる期間が長くなりますが、返還率が高くなります。過払い金返還請求を行うにあたって、任意交渉によるのか、裁判を提起して交渉するのかについては弁護士と相談して選ぶことができます。
なお、裁判をする場合であっても弁護士が代理人として裁判対応しますので、ご本人が出廷するようなことは、ほぼありませんのでご安心ください。
⑵ 回収にかかる期間
エポスの場合、任意交渉による解決では返還合意に至るまでの期間はおよそ1週間~1ヶ月です。また着金までの期間としては1~3ヶ月です。
他方、裁判を行った場合に訴訟上の和解が成立するまでにかかる期間は提訴してから1~1.5ヶ月位です。また、着金までの期間としては合意後2~3ヶ月です。
(以上シン・イストワール法律事務所の実績)
一般的に裁判をした場合は時間がかかると言われているようですが、上記のとおり、それほど長期間になることはありません。
⑶ 回収率
過払い金返還請求の広告サイトなどでは、貸金業者の過払い金回収率について「過払い金返還率~%」といった記載がよく見られます。しかし、注意すべきことは、そもそも「~%」というのは何をもとにした割合なのかという点です。
通常、過払い金にはそれが発生した時からの利息(過払利息)が年5%の割合で付加されていきます。よって、過払い金を計算した結果、過払い金(過払元金)が200万円、その利息(過払利息)が50万円であれば、合計250万円の過払い金(過払元利金)を返還請求することができるのです。この250万円(過払い元利金)が「本来請求できる金額」なのです。
よって「過払い金返還率100%」と謳っていても、上記の例でいうと、過払い元金(200万円)の100%なら回収額は200万円であり、過払い元利金(250万円)の100%なら回収額は250万円となります。
つまり、回収率が100%と書いてあったとしても、それが過払い元金(200万円)をもとにしているのであれば、正確な回収率に計算し直すと、実際には80%(200÷250)にしかならないと言うことになります。
ですから、過払い金の広告サイトの回収率については、必ず何をもとにした割合なのかという点を注意して見るようにしてください。数字のマジックに惑わされないようにしましょう。
では、本題にもどしましょう。
エポスの場合、シン・イストワール法律事務所の実績では回収率は以下のとおりです。
裁判外の任意の交渉の場合 (任意交渉) | 過払い元利金の約80% ※取引の内容に争点がない場合 |
裁判をした場合 (訴訟上の和解) | 過払い元利金の約90~95% ※取引の内容に争点がない場合 |
⑷ まとめ
以上のことからすると、裁判をして過払い金を回収した方が回収率は高くなります。回収までにかかる期間については、任意交渉の方が早いといえますが、その差も数か月程度です。しかも裁判自体は和解によってすぐに終わるので、訴訟上の和解後、着金予定の過払い金を待つだけの期間が2~3ヶ月かかるだけです。
よって、どうしても今すぐお金が必要ということでないのであれば、回収率の高い方法、即ち、裁判を提起して回収する方法をお勧めします。
5.争点(エポスが特にこだわる争点)
⑴ 過払金の額は何で決まるのか
一般的に過払金の額は何によって決まるのでしょうか。
過払い金とは「払い過ぎた利息」のことなので、法律の上限を超えた利率を前提に「どれだけ多く返済を行ったか」で決まることになります。
つまり、取引の額(借入額や限度額)が多いほど、取引の回数(返済の回数)が多いほど、取引の期間(違法利率で取引した期間)が長いほど過払い金の額は多くなるといえます。
しかし、上記以外でも過払い金の額が左右されるポイントがいくつかあります。場合によっては過払い金が消滅することもあります。これを「過払い金の争点」と言いますが、以下ではエポスがよく主張してくる争点について詳しく説明していきたいと思います。
⑵ 取引の分断
取引の途中にいったん約定債務を完済することはよくあることです。例えば将来、借り入れするかもしれないけれど、当面は借入する必要性がないなどの理由で、いったん完済し、キャッシングカード(会員カード)を保有したまま数年ほど経って、キャッシングを再開するような場合です。
このようなケースで過払金返還請求をすると、エポスなどのクレジット信販会社は「取引が分断している」などと主張してきます。その結果、当初計算した過払い金の額より少ない額の提案をしてきます。
どういうことかと言うと、いったん完済してから取引(借入)の再開をするまでに「取引の空白期間」が数年の長期に及んでいるので、この空白期間の前後で取引は2つに分断されると主張するものです。その結果、空白期間前の取引は完済した時から10年経っているので時効で消滅しており、過払い金が発生するのは空白期間後の取引分についてのみだとして、当初の計算より減額した過払い金額で和解提案をしてくるのです。
このように完済したことによって取引が2つに分断されると、取引ごとに過払い金を計算することになるので、1つの取引として計算したときより、過払い金の額は少なくなります。場合によっては、空白期間の前の取引は時効で消滅したり、空白期間の後の取引が法定内の利率のため過払い金が発生しない取引だったりして過払い金が0円というケースもあります。
この争点のことを「取引の分断」と言いますが、ポイントは「いったいどれ位の空白期間で取引が分断されるのか」という点です。その判断については、空白期間だけで単純に判断することはできないのですが、エポスとの交渉場面に限定していうと、空白期間が3年を超えると分断を認めざるを得ないと考えてよいでしょう。
この点、シン・イストワール法律事務所では、過払い金請求事件の裁判を相当数扱ってきた実績があり、どのような事情で取引が分断となるのか、また、裁判所がどのような点を重視して分断の有無を判断するのかについて豊富な情報蓄積がありますので、分断の争点があるケースについてはお気軽にお問い合わせください。
6.まとめ
以上みてきたように、エポスは財務状況に問題がなく、過払い金の返金対応も良心的ですので,2007年(平成19年)3月15日以前からエポスカード(マルイカード)を利用していた方(ゼロファーストなら同年4月15日以前から利用の場合)は,過払い金の調査だけでもトライしてみるべきです。シン・イストワール法律事務所では過払い金の調査は無料で行っています。
完済した方については、完済してから10年が過ぎると過払い金は時効消滅してしまうのでぜひ今すぐ調査すべきです。また、今現在支払い中の方にあっては、過払い金によって今の債務が無くなる(もしくは減額される)可能性が高いと言えるので、やはり今すぐ調査することをお勧めします。調査の結果、過払いとなっていれば、過払い金の回収を行ってもブラックにはなりません。
なお、司法書士に調査を依頼する場合はご注意ください。過払い金を調査した結果、その額が140万円を超えていた場合、司法書士は法律上、返金交渉をすることが禁じられています(弁護士法72条)。二度手間にならないよう最初から弁護士事務所に調査を依頼しましょう。