1.クレディセゾンの過払い金が発生する場合
株式会社クレディセゾンは西武などのセゾングループが作ったカード会社で国内大手のクレジット会社の1つです。セゾンカードは以前、年24%~26%の違法金利で貸し付けを行っていましたので、同カードでキャッシングをしていた場合、過払い金が発生している可能性が高いといえます。
また、クレディセゾンが平成18年1月に、ユーシーカード(UCカード)株式会社と統合したことにより、UCカードは、株式会社クレディセゾン内でのUCカードブランドとなりました。よって、UCカードで発生した過払い金についても、クレディセゾンに請求をしていくことになります。
その他、セゾングループには、セゾンファンデックス、セブンCSカードなどもあります。これらについても過払い金が発生している可能性は高いのですが、過払い金の請求先についてはクレディセゾンではなく、セゾンファンデックスやセブンCSカードサービスとなります。
ただし、クレディセゾンは平成19年以降、キャッシングの金利を適法な金利に変更しているため、過払い金が発生するのは、それ以前からキャッシングを利用していたことが条件となってきます。これはUCカードについても同様です。正確には以下のとおりです。
(セゾンカードの過払い金)
平成19年(2007年)7月13日以前から利用していたことが条件
(UCカードの過払い金)
平成19年(2007年)6月10日以前から利用していたことが条件
一方、セゾンカードやUCカードで買い物をした場合、もしくはエステや自動車教習所の料金をカード決済したような場合には、過払い金は発生しません。これらのショッピング利用分は貸付金ではなく立替金であり、支払った「分割手数料」も利息ではないことから、過払い金というものが発生しないからです。
2.過払い返還請求に対するクレディセゾンの対応
過払い金返還請求に対するカード会社の対応は、各会社によってさまざまです。クレディセゾンは、過払い金の返還については「良心的な対応」をする会社といえ、交渉についても比較的スムーズです。和解後、平均2ヵ月程度で、クレディセゾンから過払い金が振り込まれます。
また、クレディセゾンは大手の信販会社で経営は比較的安定していますので、過払い金の回収率も良好といます。
3.回収までにかかる期間・回収率
⑴ 回収の方法
過払い金返還請求をすれば、カード会社などがそれをそのまま支払うとは限りません。したがって過払い金返還請求をした後、相手方の会社と返還額や支払日について交渉をする必要があるのです。ここで、交渉の方法は2つあります。
1つは、裁判を提起したうえで、その手続きの中で解決する方法、もう1つは裁判を介さずに話し合いで解決する方法(任意交渉)です。前者では、判決を得て強制的に過払い金を支払わせる場合と返還額や支払日について当事者で合意する場合(訴訟上の和解)の2通りあります。通常、過払い金返還を求める裁判では、訴訟上の和解で終わる場合がほとんどです。結局、裁判をしてもしなくても相手方会社と合意して終結するのが一般的ということになります。
ここで、裁判をした場合(訴訟上の和解)としない場合(任意交渉)との違いについていうと、一般的に、任意交渉で解決した方が回収までにかかる期間は短く済む反面、過払い金の返還率は低くなり、他方、裁判をしてその中で交渉すると手続きにかかる期間が長くなりますが、返還率が高くなります。過払い金返還請求を行うにあたって、任意交渉によるのか、裁判を提起して交渉するのかについては弁護士と相談して選ぶことができます。
なお、裁判をする場合であっても弁護士が代理人として裁判対応しますので、ご本人が出廷するようなことはほぼありませんので、ご安心ください。
⑵ 回収にかかる期間
クレディセゾンの場合、任意交渉による解決では返還合意に至るまでの期間はおよそ1週間~1ヶ月です。また、着金までの期間としては1~3ヶ月です。
他方、裁判を行った場合に訴訟上の和解が成立するまでにかかる期間は、提訴してから1~1.5ヶ月位です。また着金までの期間としては合意後4~6ヶ月です。
(以上シン・イストワール法律事務所の実績)
一般的に裁判をした場合は時間がかかると言われているようですが、上記のとおり、それほど長期間になることはありません。
⑶ 回収率
過払い金返還請求の広告サイトなどでは、貸金業者の過払い金回収率について「過払い金返還率〇%」といった記載がよく見られます。しかし、注意すべきことは,そもそも「〇%」というのは何をもとにした割合なのかという点です。
通常、過払い金にはそれが発生した時からの利息(過払利息)が年5%の割合で付加されていきます。よって、過払い金を計算した結果、過払い金(過払い元金)が200万円、その利息(過払い利息)が50万円であれば、合計250万円の過払い金(過払い元利金)を返還請求することができるのです。この250万円(過払い元利金)が「本来請求できる金額」なのです。
よって「過払い金返還率100%」と謳っていても、上記の例でいうと、過払い元金(200万円)の100%なら回収額は200万円であり、過払い元利金(250万円)の100%なら回収額は250万円となります。
つまり、回収率が100%と書いてあったとしても、それが過払い元金(200万円)をもとにしているのであれば、正確な回収率に計算し直すと、実際には80%(200÷250)にしかならないと言うことになります。
ですから、過払い金の広告サイトの回収率については、必ず何をもとにした割合なのかという点を注意して見るようにしてください。数字のマジックに惑わされないようにしましょう。
では、本題にもどしましょう。
クレディセゾンの場合、シン・イストワール法律事務所の実績では、回収率は以下のとおりです。
裁判外の任意の交渉の場合 (任意交渉) | 過払い元利金の約70~80% ※取引の内容に争点がない場合 |
裁判をした場合 (訴訟上の和解) | 過払い元利金の約90~95% ※取引の内容に争点がない場合 |
⑷ まとめ
以上のことからすると、裁判をして過払金を回収した方が回収率は高くなります。回収までにかかる期間については、任意交渉の方が早いといえますが、その差も数か月程度です。しかも裁判自体は和解によってすぐに終わるので、訴訟上の和解後、着金予定の過払金を待つだけの期間が4~6ヶ月かかるだけです。
よって、どうしても今すぐお金が必要ということでないのであれば、回収率の高い方法、即ち、裁判を提起して回収する方法をお勧めします。
4.争点(クレディセゾンが特にこだわる争点)
⑴ 過払い金の額は何で決まるのか
一般的に過払い金の額は何によって決まるのでしょうか。
過払い金とは「払い過ぎた利息」のことなので、法律の上限を超えた利率を前提に「どれだけ多く返済を行ったか」で決まることになります。
つまり、取引の額(借入額や限度額)が多いほど、取引の回数(返済の回数)が多いほど、取引の期間(違法利率で取引した期間)が長いほど、過払い金の額は多くなるといえます。
しかし、上記以外でも過払い金の額が左右されるポイントがいくつかあります。場合によっては過払い金が消滅することもあります。これを「過払い金の争点」と言いますが、以下ではクレディセゾンがよく主張してくる争点について詳しく説明していきたいと思います。
⑵ 完済の有無
取引の途中にいったん約定債務を完済することはよくあることです。例えば、将来、借り入れするかもしれないけれど、当面は借入する必要性がないなどの理由で、いったん完済し、キャッシングカード(会員カード)を保有したまま数年ほど経って、キャッシングを再開するような場合です。
このようなケースで過払い金返還請求をすると、クレディセゾンなどのクレジット信販会社は「取引が分断している」などと主張してきます。その結果、当初計算した過払い金の額より少ない額の提案をしてきます。
どういうことかと言うと、いったん完済してから取引(借入)の再開をするまでに「取引の空白期間」が数年の長期に及んでいるので、この空白期間の前後で取引は2つに分断されると主張するものです。その結果、空白期間前の取引は完済した時から10年経っているので時効で消滅しており、過払い金が発生するのは空白期間後の取引分についてのみだとして、当初の計算より減額した過払金額で和解提案をしてくるのです。
このように完済したことによって取引が2つに分断されると、取引ごとに過払金を計算することになるので、1つの取引として計算したときより、過払い金の額は少なくなります。場合によっては、空白期間の前の取引は時効で消滅したり、空白期間の後の取引が法定内の利率のため過払い金が発生しない取引だったりして、過払い金が0円というケースもあります。
この争点のことを「取引の分断」と言いますが、ポイントは「いったいどれ位の空白期間で取引が分断されるのか」という点です。その判断については、空白期間だけで単純に判断することはできないのですが、クレディセゾンとの交渉場面に限定していうと、空白期間が3年を超えると分断を認めざるを得ないと考えてよいでしょう。
この点、シン・イストワール法律事務所では、過払い金請求事件の裁判を相当数扱ってきた実績があり、どのような事情で取引が分断となるのか、また、裁判所がどのような点を重視して分断の有無を判断するのかについて豊富な情報蓄積がありますので、分断の争点があるケースについてはお気軽にお問い合わせください。
⑶ マンスリークリア取引
マンスリークリア取引とは、クレジットカードの決済方法の1つで、翌月や翌々月に一括支払する方式(1回払いキャッシングサービスとも言う。)です。当然、当月の利用回数が多くなればなるほど、それに対応した返済額も多くなります。クレディセゾンのUCカードではこの方式が採られています。
これに対し、キャッシングで借りたお金をリボ払いで返済するキャッシングリボというものもあります。リボ払いとは、毎月の利用額にかかわらず、毎月一定の金額を返済する支払方式のことです。
過払い金を計算する、リボ払いの取引では、すべての借入と返済を一連一体の取引(つまり1つの取引)とみなして過払い金をします。かつてはマンスリークリア取引も個々の取引(借入と返済)に分解せずに、すべてを一連一体の取引とみなして過払い金を計算していました。
しかし、最近、クレディセゾンやニコスなどが、マンスリークリア取引は個別の取引に分解されるので一連計算することはできず、過払い金についても個別に(バラバラに)計算すべきであると主張するようになりました。その結果、過払い金の消滅時効についても、分解した個別の取引の返済時点から進行するとして、返済後10年を経過したものは時効消滅を理由に過払い金を認めようとしません。
クレディセゾン、過払い金の返還交渉をした際、マンスリークリア取引については必ずと言っていいほど上記のような主張をしてきます。そのため裁判外の交渉においては、ある程度の譲歩が必要になってきます。ただ、近時、前記のようなクレディセゾンの主張を認めなかった裁判例(東京地方裁判所:平成28年10月24日判決)もあるので、裁判を提起して、この争点についてある程度争って過払い金を回収するのであれば、一連計算が認められる可能性は高いといるでしょう。
シン・イストワール法律事務所では、この争点についても熟知しておりますので,UCカードのマンスリークリア取引の経験がある方はぜひ当事務所にお問い合わせください。
5.まとめ
以上みてきたように、クレディセゾンは財務状況も良好で、過払い金の返金対応も良心的ですので、平成19年(2007年)7月13日以前からセゾンカードを利用していた方(UCカードは同年6月10日以前から利用の場合)は、過払い金の調査だけでもトライしてみるべきです。シン・イストワール法律事務所では過払い金の調査は無料で行っています。
完済した方については完済してから10年が過ぎると過払い金は時効消滅してしまうのでぜひ今すぐ調査すべきです。また、今現在支払中の方にあっては、過払い金によって今の債務が無くなる(もしくは減額される)可能性が高いと言えるので、やはり今すぐ調査することをお勧めします。調査の結果、過払いとなっていれば、過払い金の回収を行ってもブラックにはなりません。
なお、司法書士に調査を依頼する場合はご注意ください。過払い金を調査した結果、その額が140万円を超えていた場合、司法書士は法律上、返金交渉をすることが禁じられています。二度手間にならないよう最初から弁護士事務所に調査を依頼しましょう。