自己破産するとどうなってしまうの!?自己破産をする上で気をつけたい9つのポイントを弁護士が解説!

主に借金を解決する「債務整理」の方法は3つあります。

任意整理、個人再生、そして自己破産です。本当に簡単に申し上げると前の2つは払っていく方向の整理で自己破産は財産を処分して残った借金は払わない方向の整理です。

では借金に苦しんだ場合、ふさわしいのは自己破産ですよね。返済しなくてよくなるのですから。では、返済が苦しくなったら、まずは自己破産を選択するのが一番でしょうか。

実はそうではありません。

あなたの状況によっては、自己破産をお勧めできない、むしろNGという場合があります。また、自分で自己破産したいと思っても、そもそもできない場合もあるのです。

そこで、破産手続きをするうえで気をつけたい9つのポイントについて解説します!

ポイント①:「支払不能かどうか」

借金が0になる「自己破産」。しかし自己破産の申立てをするには条件があることを知っていましたか?

自己破産は裁判所に申し立て、裁判所の判断で借金を0にしてもらいます。しかし、そもそも「破産原因」というものが認められないと破産申立て自体が受け付けられず、申立ては却下(つまり門前払い)となってしまいます。

破産原因とは何かというと、それは「支払い不能」です。破産の申立書には「この人が支払不能だ」ということを記載して、裁判所にそれを認めてくださいとお願いするのです。

それでは、どの程度の状態が「支払不能」といえるのでしょうか?

・資産がある場合

 もし、資産(不動産、高価な動産、預貯金、生命保険の解約返戻金など)があり、それを換金して借金を全部返済できるのであれば、支払不能とはいえません。

・資産がない場合

 他方、めぼしい資産がなく、借金返済は今後の収入で払うしかない場合には、次のようにして支払不能か否かを判断します。

 まず、毎月返済にあてられるお金(可処分所得と言います。)がいくら位かを算出します。

 すなわち、手取り月収から生活経費(借金返済は除く)を引いた残りのお金。これが自由に使えるお金であり、法律上「可処分所得」と言われます。家計が同じであれば、その家計全体で計算します(収入、経費も合算する)。

次に、借金の総額を出します。

最後に、借金総額を「36~60」で割り算し、その金額と「可処分所得」とを比較した結果、可処分所得の方が下回っていれば「支払不能」といえるのです。

どういうことかというと、借金の手続きのうちの1つ、「任意整理」をした場合、通常、その借金を将来利息なしで3年~5年で分割弁済することになります(36~60回払い)。つまり、借金総額を「36~60」で割り算した金額というのは任意整理をした場合の毎月の支払額なのです。もし、可処分所得がこの支払額に足りない場合には、客観的にみてその人は借金を支払っていくことはできないと考えられるからです。

ポイント②:「不動産を所有しているかどうか」

破産とは清算であり、借金を0にする代わりに、一定範囲のプラスの財産も処分しなければなりません。もちろん、住宅などの不動産も処分対象となり、お金に換えて債権者への配当金(破産財団)とするのです。

不動産に住宅ローンなどの抵当権が付いている場合には、その不動産の価値(査定額)からローン残金を引いた金額がその不動産の価値になります。もしローン残が不動産査定額の1.5倍以上の「オーバーローン」状態なら、破産手続き上は「価値なし」とみなされ、財団からは除外されます(勝手に処分してよいということ)。

しかし、その場合は金融機関などの債権者が抵当権を実行して競売することになるので、結局、不動産を残すことはでません。

よって、どうしても住宅を守りたいとう人は自己破産を避けるべきです。もし住宅ローンの返済だけを続け、他の借金を整理したいのであれば、「任意整理」か「個人再生」手続きを検討するのが良いでしょう。家を守れるかどうかに関わる重要な問題ですから、自分だけで考えず、弁護士や司法書士などの専門家に相談すること大事です。

ポイント③:「保証人がいるかどうか」

自己破産すると保証人・連帯保証人に一括請求されることになります。

保証人とは、人的担保と言って、借入した本人が支払わない場合に代わりに支払うことを債権者と約束したからです。

しかも、本来分割払いしていた借金も、自己破産と同時に「期限の利益」(分割払いの利益)を失います。つまり、債権者は一括請求することが可能となります。その結果、保証人は残った借金すべて一括請求されてしまうことになるのです。

一括返済を請求された保証人(連帯保証人)が支払うことができない場合、保証人自身も自己破産するというケースが数多くあります。例えば、自分の妻や親が家のローンの保証人だった場合、住宅を競売しても残ってしまうローン残債務については、保証人も同額の借金を背負うことになります。

自己破産をすることによって、保証人や連帯保証人には多大な迷惑をかけることになります。よって、自己破産すると決めたら、そのことを保証人や連帯保証人には、事前に説明するようにしてください。

ただ、気をつけていただきたいのは保証人に迷惑がかかるからと言って、自己破産をせず問題を先延ばしにするのは間違いです。今、あなたが支払不能であれば、返済を滞納するのは目の前だからです。滞納した時点で保証人に請求がいくのは必至だからです。

では、保証人に迷惑をかけずに借金を解決する方法はあるのでしょうか?

借金の額にもよりますが、「任意整理」が可能であれば、保証人に対する影響を最小限に抑えることが可能でしょう。

任意整理とは、弁護士などを依頼して、債権者と返済条件の変更や借金額の減額などを交渉する手続きのこと。

弁護士が、借入した人(主債務者)の代理人になるだけでなく、保証人の代理人にもなって債権者と交渉し和解するのです。交渉の結果、主債務者が和解書に定められた条件で返済する限り、保証人が払うこともありません。しかし、この場合でも保証人は和解金返済の範囲内で責任を負うのが通常ですから、主債務者が和解金の支払を怠ったときには同様の問題が起こり得ます。

保証人が絡む借金問題は複雑ですから、このような場合、弁護士などの専門家に相談することは選択肢の一つです。

ポイント④:「退職金があるかどうか」

破産手続きでは将来もらう予定である退職金もその人の財産とみなされています。

退職金は将来もらうものですから、金額も決まってないし、今自由に使える資産ではないので、返済できないじゃないか、と思いますよね。

しかし、債権者から見れば、破産で借金を0にした後、退職金を受け取るのは納得できませんよね。そこで、破産手続きでは、破産する今、退職したとしてもらえるであろう退職金の額を算出し、その1/8が20万円以上となる場合には、その1/8相当分を(潜在的な)現在の資産とみなすことにしました。

例えば、現時点で支給される退職金が仮に240万円だとすると、その1/8にあたる30万円は資産とみなされ、債権者に対する配当原資(破産財団)として差し出さなければならないのです。

では、その方法ですが、実際に退職する必要はありません。先ほどの例で言うと、資産と見なされた30万円を現金で裁判所に予納すればよいのです。

そうすると、勤続年数が長く、退職金が高額になりそうな人が破産をしようとする場合、その1/8がいくら位になるのか、その額を用意できるのかについては、十分検討しておく必要がありますね。

ポイント⑤:「解約返戻金付きの生命保険があるかどうか」

積立型の保険に加入している方も多いと思います。積立型とは保険料が積み立てられ、解約した際、一定額のお金(解約返戻金)が支払われるタイプの保険です。これに対し、解約しても返戻金がないものを「掛け捨て」型と言います。

破産手続きでは、このような解約返戻金も20万円以上となれば資産とみなされ、処分の対象となります。

どうしても保険を継続したい場合には解約する必要はありませんが、代わりに解約すれば本来支払われるはずの返戻金と同額のお金を破産財団として差し出さなければなりません。

逆に、解約してもいいのであれば、解約して受け取った現金から弁護士の破産費用などを払った結果、20万円を下回れば、もはや資産とはみなされなくなります。

よって、本当に必要な保険なのかどうかを十分検討する必要があります。

ポイント⑥:「相続財産があるかどうか」

相続財産と聞いてもピンとくる方は少ないと思いますがその典型例は、亡くなった親の実家です。もしこれを相続しているのなら、その共有持ち分(不動産)を所有していることになるので、資産とみなされ、処分の対象となります。

よく、起こりうるケースですが、親が実家を残して亡くなった後、同居していた長男などがそのまま居住し、他の兄弟姉妹としては「実家は長男だけが相続した」「自分は住んでいないし、口頭でいらない、と放棄したから相続していない」と思っている方がたくさんいます。

気をつけなければいけないポイントは長男が単独相続したのであれば、その様に遺産分割協議書を作成していなければ、裁判所は認めてくれません。また、相続放棄は、死亡3カ月以内に家庭裁判所に対し相続放棄の申立てをしてこれが認められなければ効力がありません。

もし、そのような手続きをしていないのなら、部分的に実家を相続していることになるのです。不動産を相続した場合、その持ち分はお金に換算すると高額になることが少なくありません。この持ち分かそれと同額のお金を破産財団として差し出すことができなければ破産することはできないのです。

ですから、破産をする前に相続財産の有無についてはよく調べておくことが大事です。ただ、これには専門知識が不可欠なので、事前に弁護士や司法書士などの専門家に相談するとよいでしょう。

ポイント⑦:「一定の職業については資格制限などが発生する」

・破産法により資格制限がある

破産の申立てをすると手続きが終了して免責が確定するまでの間(概ね3ヶ月から6か月ほど)、一定の職業に就くことが出来なくなります。ただし、免責が確定することによりそのような制限はなくなります(これを「復権」と言います)。

(資格制限にかかる職業の例)

  • 生命保険募集人(保険外交員)および損害保険代理店
  • 宅地建物取引業および主任者(宅地建物取引士)
  • 旅行業および取扱主任者
  • 警備員
  • 風営法上の管理者(パチンコ店の店長など)
  • 弁護士、会計士など士業

上記の職業の人は、破産申立後はその職を下りなければなりません。離職すればよいので、必ずしも退職する必要まではありません。例えば、保険外交員の人が、破産手続きだけ事務職として雇用される形でも構いません。

・会社の取締役は辞任となる

会社の役員(取締役)に就任している人は、破産申立てをすると辞任しなければなりません。というは、そもそも会社と取締役との関係は委任契約に基づいていて、民法上、破産の申立ては委任契約の終了事由と定められているからです(民法653条)。

・金融関係の仕事に就いている人は要注意

破産の申立てをするとその人の氏名や住所が官報(国の広報紙)に掲載されます。また、免責が確定したときにも掲載されるので全部で2回載ることになります。

ただ、「官報に載る」と言っても、官報を見る人はごくわずかです。よって、通常、官報に掲載されても、それだけで破産したことが周囲にバレるという可能性は相当低いでしょう。

とはいっても、金融機関などは官報を定期的にみているので、金融機関にお勤めの方は、自己破産したことが会社に分かってしまう可能性が否定できません。

ポイント⑧:「公的受給は自己破産をしても影響なし」

公的年金や生活保護などを受給している方が自己破産を申し立てても、今まで通り受給が可能です。また、受給した現金を破産財団として差し出す必要もありません。なぜなら、年金や生活保護は、最低限の生活を保障するために認められたものですから、そもそも差押えが禁止されており、破産財団とすることはできないからです。

よって、公的受給で生活しているか否かど破産できるか否かは別問題といえます。

ここで、注意しなければならないは、生活保護受給者については借金整理の方法は自己破産しかないという点です。というのは、そもそも生活保護費の源泉は税金であり、その人の最低限の生活を保護する目的で給付されるものですから、このお金で借金を返済することはできないのです。よって、払っていく方向の借金整理(任意整理)をすることはできず、自己破産するしかないのです。

ポイント⑨:「免責されない債務があることをチェック」(非免責債権)

・破産とは借金をすべて0にすることです。しかし、これには例外があり、破産しても免責されない債務もあります。これを債権者の側からみて「非免責債権」と言います。

例えば、税金や罰金などは法の強制力を維持する見地から非免責債権とされています。また、養育費などの扶養義務についても人道的見地から免責されません。

その他、以下のような債務も免責されないので注意してください。

・悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権

詐欺や横領によって財産的損害を与えたような場合を指します。具体的には、会社員が会社のお金を横領して損失を与えたり、自営業者が架空の売掛債権を担保にして業者からお金を借りたりするようなケースがあります。

・故意又は重過失による生命、身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権

これは暴行などによってわざと相手に怪我をさせたような場合の損賠賠償債務です。自己破産することでそのような賠償義務を免れることは、正義や被害者救済の観点から認めるべきではないからです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。以上で述べた9つのポイントが自己破産をするかしないかで見極める大きなポイントとなります。

自己破産を考えている方は、1つ1つ確認してみてください。

弁護士に相談すれば全ての条件をきちんとスクリーニングした上で最適な手続きを提案してくれますので、一人で悩む前に無料相談をしている弁護士に相談してみます。

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