借金の返済に苦しむ債務者を救済する方法として知られる債務整理。しかし、債務者にとってメリットしかなければ、債権者にとっては不利な点しかなく、無計画な借金を後押ししてしまうことになります。債務整理にはメリットの一方でデメリットがあることも知っておかなければなりません。
近年は、債務整理に関するメリット・デメリットを知るためにYahoo!知恵袋などを利用している方も多いでしょう。しかし、そうしたインターネットの掲示板はあくまで一般ユーザーの投稿によって成り立っているため、正確な情報が掲載されていないことがあります。債務整理の情報は、やはりプロである弁護士から聞くのが安心です。こちらでは、債務整理のメリットとデメリットの実態について、プロがくわしくお話しします。
債務整理の種類とデメリットを解説
借金が減額・免除される点が、債務整理の代表的なメリットです。ただし、デメリットもあるため無計画に利用するのはおすすめできません。メリットの一方でデメリットも把握しながら計画的に利用する必要があります。以下では、債務整理の種類とそれぞれのデメリットについてご案内します。
任意整理
任意整理は貸金業者の交渉により借金の減額や支払い期間の調整をする手続きです。債務者(実際には弁護士・司法書士が代理人となる)と貸金業者の間で和解を目指す手続きであり、裁判所は関与しません。これまでの無理な返済計画を見直し、現実的な返済を目指すことになります。
債務整理のなかでは最もデメリットが少なく、気軽に利用できる手続きです。ただし、法的な手続きではないため強制力が弱く、債権者によっては応じてくれないケースもあります。また、最終的には完済を目指す手続きのため、債務者に安定した収入がなければ利用できません。
個人再生
個人再生は借金の大幅な減額により分割での返済を目指す法的な民事再生手続きのひとつです。減額効果は上述した任意整理よりも大きく、5分の1程度に圧縮されることも少なくありません。3~5年をかけてこの減額後の借金を支払っていくことになります。
ただし、任意整理と同じく現実的な支払い計画を再考するための手続きであるため、収入が不安定な方やそもそも収入がない方は利用できません。また、国が発行する「官報」という機関紙に利用者の住所氏名が記載されるため、利用した事実が家族や職場に知られてしまうリスクがあります。
自己破産
自己破産は、借金返済義務そのものをなくす法的な手続きです。減額ではなく借金がゼロになるため、債務整理のなかでは最も強力な救済効果を有しているといえます。手続きが終わったあとの収入は生活費に充てることもできますので、生活を立て直すことも可能です。
一方で、利用できるのはその時点の収入や状況などから返済が不可能と見なされる債務者に限られます。また、保証されるのは最低限の生活であり、不動産をはじめとした高額な財産は処分しなければなりません。士業など一部の職種から一時的に離れなければならない、一時的に就くことができない、といった職業上の制限もあります。
自己破産しただけでは職場や家族に知られることはありません。ただし、個人再生と同様に国の機関紙である官報には住所・氏名が記載されてしまいます。そこから外部に情報が知られる可能性は否定できません。
債務整理をするとブラックリストに!?
債務整理に共通するデメリットが、ブラックリスト入りしてしまうという問題です。ブラックリスト入りとは、金融事故の履歴が個人信用情報機関の保管する信用情報に記録されること。債務整理をした事実も事故情報として記録されます。
銀行融資、クレジットカードなどの契約では、原則として審査に通過しなければなりません。銀行や貸金業者が審査を行うのは「申込者が本当に返済できるのか」というリスクを判断するためです。この際に、金融機関、貸金業者が審査の判断材料として参照するのが申込者の信用情報です。
ブラックリスト入りの状態では返済能力が疑われ、審査通過が難しくなります。さらに、一度ブラックリストに登録されると、5~7年間は信用情報がクリーンな状態に回復しません。債務整理を行う場合は、ブラックリスト入りすることを念頭に置いておく必要があります。
また、一部の家賃保証会社を利用する賃貸物件では、審査の際に申込者の信用情報を参照するため、ブラックリスト入りしていると審査に通過できないことも考えられます。自分の信用情報に不安があるなか賃貸物件を探している場合は、どのような保証形態になっているのかについても注目しましょう。
住宅ローンが組めなくなる?
「債務整理をすると住宅ローンを組めなくなるのでは?」という疑問が多く聞かれます。上述したとおり、ローンや融資の契約では申込者の信用情報が参照され、事故情報が確認されると審査通過は期待できません。住宅ローンの審査でも、債務整理でブラックリスト入りしていればとても不利になってしまいます。
ブラックリスト入りの解除には時間がかかるため、債務整理をしてから数年は住宅ローンが組めなくなることを覚悟しなければなりません。例として、任意整理で借金を完済してから5年間はブラックリスト入りとなり、住宅ローンが組めなくなります。
住宅ローンを返済中の場合も注意が必要です。自己破産などは返済中のすべての借金が対象となるため、住宅も整理対象となり手放さなければならなくなります。任意整理や個人再生では住宅を処分対象から除外することも可能です。
クレジットカードが使えなくなる?
クレジットカードが原因で借金苦に陥る人は少なくありません。近年は特に「リボ払い」によって借金が膨らんでしまうケースが目立っています。「債務整理によってクレジットカードが使えなくなる?」という疑問を持っている方も多いようです。結論から言えば、事実として債務整理をするとクレジットカードが利用不可になります。2つのケースがあるため、それぞれについて説明しましょう。
クレジットカードの返済に対して債務整理する場合
債務整理はクレジットカードの返済が難しくなった場合にも利用可能です。任意整理、個人再生では返済額が減額されます。自己破産では、クレジットカードの返済義務そのものがなくなります。
ただし、整理の対象となったクレジットカードはそれ以降利用できません。具体的には、債務整理をする事実を伝えて督促を止めるための受任通知が弁護士から送られ、クレジットカード会社に届いた時点で、そのクレジットカードは強制解約となります。その後の債務整理が成功するとしても失敗するとしても、強制解約になることは免れません。
債務整理後にブラックリスト入りし、クレジットカードの再契約が一定期間できなくなることは上述したとりです。また、強制解約の時点でクレジットカードのサービスとして付帯していたマイルやポイントなども失効します。
クレジットカード以外の借金を債務整理した場合
任意整理では、整理の除外とする借金を選ぶことも可能です。クレジットカードを整理対象から除外すると、クレジットカードを残すこともできます。ただし、その後も問題なくクレジットカードを使い続けられるとは限りません。
クレジットカード会社は顧客の信用情報を定期的にチェックしています。他の借金に対して債務整理をした時点で信用情報はブラックリスト入りしていますので、クレジットカード会社がその顧客の信用情報を調べれば、ブラックリスト入りしている事実が判明します。クレジットカード会社が顧客の信用情報を調べるのは以下のようなタイミングです。
- キャッシング利用申し込み時
- 支払いの延滞・遅延発生時
- 契約更新時
- 利用頻度が多いときなど法律によって義務付けられたタイミング
- 各カード会社で定められたタイミング
ブラックリスト入りが分かった際の対応はカード会社によって異なります。それまでの利用状況に問題がないと見なされれば、カード利用を継続できることも少なくありません。一方で、「リスクのある顧客」と判断され、すぐに強制解約となってしまうこともあります。
債務整理をするメリットとは
ここまでお話ししたデメリットがあるなかで債務整理が利用されているのは、それを補って余りあるメリットがあるからです。任意整理、個人再生、自己破産にはそれぞれ個別のメリットがあります。以下では、具体的なメリットを債務整理の種類ごとにご紹介します。
任意整理
任意整理は債務者の救済効果は大きくありませんが、その分デメリットが少なく利用しやすい債務整理といえます。弁護士からの受任通知が債権者に届いた時点で督促が止まるため、ひとまず精神的な落ち着きを取り戻したい際にも有効です。
他の債務整理との大きな違いは裁判所を通さないことです。法的な効力はないものの、最も穏便に債権者と和解できる方法といえます。基本的には弁護士や司法書士を利用するため、債務者自信が直接交渉を行うことはありません。
整理する借金を選べることも特徴のひとつ。上手く使えば、財産を手放さずにそのまま残すこともできます。保証人付きの借金のみを除外して、債務が移るのを防ぐことも可能です。自動車ローンを整理から除けば、車を残すこともできます。
また、任意整理は他の手続きと比較して家族や職場に知られにくいと考えられています。これは、裁判所に出頭する必要がないことや必要書類が少ないことなどが理由です。国が発行する官報への氏名・住所掲載もありません。
個人再生
個人再生は任意整理とは異なり裁判所が介入する法的な手続きです。認可されれば法的な強制力を持ちます。債権者の同意が得られなかったとしても、認可されれば債権者は定時された再生計画に従わなければなりません。
借金の減額効果も任意整理と比較して協力です。借金の額によっては、最大10分の1まで圧縮されることがあります。減額だけではなく、返済期間が3~5年間で見直されるため、現実的で余裕を持った返済が可能です。
自己破産と比較すると財産や資産の点でもメリットがあります。生活に必要な財産を除いて処分しなければならない自己破産に対し、個人再生では財産の処分は必須ではありません。破産した場合の配当額以上を弁済に充てていれば、財産の処分は任意とされています。
個人再生に限り特別に用意された住宅資金特別条項も大きなメリットのひとつ。住宅ローンが残った自宅を処分することなく、他の借金を整理できます。これによって自宅を残したまま、大幅な借金の減額、支払い期間の長期化を実現できます。
自己破産
自己破産というとデメリットばかりが取り沙汰されますが、もちろんメリットもあります。借金の支払い義務がなくなる「免責」という効果は、他の債務整理にはない強力なメリットです。文字通り借金に困窮している生活を一度リセットできる手続きといえるでしょう。
誤解されやすい点のひとつが、処分の対象となる財産です。「すべての財産を処分しなければならない」というイメージを抱いている方もいますが、自己破産では生活に必要な最低限の財産な残すことができます。住宅も処分せずに残せるため、現実的に生活を立て直すことが可能です。
また、自分名義の財産以外は処分する必要がありません。家族の名義で所有している財産については問題なく残すことができます。財産の点では家族に迷惑をかけることがない手続きといえるでしょう。
知恵袋だけに頼らず、まずは弁護士に無料相談を
債務整理のメリット、デメリットについてご案内しました。借金の返済に困窮している方が債務整理について検討している場合、まず情報源として活用するのがYahoo!知恵袋などインターネット上の情報サイトかもしれません。確かに、実際に債務整理を行った人からの投稿も多く、債務者が求めるリアルな情報が見つかります。
ただし、やはり一般の方の知識である点には注意が必要です。債務整理による減額効果、支払い期間延長効果などは、債務者の状況や抱えている借金の額によって異なります。インターネット上の情報をそのまま自分のケースに当てはめることはできません。安易にそうした情報を鵜呑みにすると、債務整理に失敗してしまうことも考えられます。
そこで相談していただきたいのが、借金問題のプロである弁護士です。相談してきた債務者の借金状況をくわしくヒアリングし、それぞれにあった債務整理の方法を提案してくれるでしょう。専門的な知識に基づいて計算されるため、提示される借金の減額効果も正確です。
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