1.ジェーシービーの過払い金が発生する場合
⑴日本を代表する国際ブランド会社
株式会社ジェーシービーは、既存の国際ブランド(「VISA」「MasterCard」など)に加わる日本国内の他のクレジットカード会社と異なり、それ自身が国際ブランドを運営し世界展開している日本を代表するカードブランド会社(世界5大クレジットカードブランドのひとつ)です。
日本で使われているクレジットカードのほとんどに、いずれかの国際ブランドが付いています。国際ブランド付きのクレジットカードは、世界中にある全ての該当加盟店で利用できます。JCBのロゴマークを付けたクレジットカードも全て世界各国のJCBの加盟店で利用することができます。
つまり「JCB」や「Visa」「MasterCard」といった国際ブランドは、様々なクレジットカード発行会社に対して世界中の加盟店で利用できるためのシステムを提供している会社なのです。
このようにジェーシービーは世界中で利用できるためのシステム提供会社(国際ブランド)であるものの、他方ジェーシービー自体もクレジットカードを発行し、カード事業を運営しています(近年では、JCBが運営するQUICPayが普及)
⑵JCBカードは2種類ある
よってJCBカードには大きく分けて2つのカードがあります。
1つはクレジットカード会社である株式会社ジェーシービーが発行するカード(ジェーシービーカード)。これはジェーシービーとの間で取引(キャッシングやクレジット決済)をするためのカードです。もしこのカードによる取引で過払い金が発生した場合にはジェーシービーに対して過払い金返還請求をしていきます。
もう1つは、その他の信販会社が発行するJCBブランドのカードがあります。例えば三菱UFJニコスが発行するニコスカードでJCBのロゴマークが付いているものです。このようなカードは、発行元である信販会社(三菱UFJニコスなど)との契約によって発行され、その信販会社との取引をするためのカードです。
もしこのカードによる取引で過払い金が発生した場合には、ジェーシービーではなく発行元である信販会社(三菱UFJニコスなど)に対して過払い金返還請求をしていくことになります。
以上のような違いがあるので、この点を是非頭に入れておいてください。
ちなみに、JCBブランドのカードを発行する信販会社・クレジットカード会社には以下のようなものがあります。なお、発行元の会社についてはカードの裏面に記載があります。
- 三菱UFJニコス(ニコスカード等)
- エポス(エポスカード)
- JCB(セゾンカード、UCカード等)
- イオンクレジットサービス(イオンカード等)
- オリエントコーポレーション(オリコカード等)
- セディナ(オーエムシーカード等)
⑶ジェーシービーカードで過払い金が発生する取引
ここではジェーシービーが発行するカード(ジェーシービーカード)で過払い金が発生する場合を説明していきます。
そもそも過払い金が発生する取引というのはキャッシング取引に限られるのですが、ジェーシービーカードのキャッシング取引には以下の2種類があります。
①マンスリークリア取引(キャッシング1回払い)
マンスリークリア取引とは、クレジットカードの決済方法の1つで翌月や翌々月に一括支払する方式(キャッシング1回払いとも言う。)です。当然、当月の利用回数が多くなればなるほど、それに対応した当月の返済額も多くなります。ジェーシービーは平成19年6月16日までは27.8%といった違法な利率で貸付けを行っていたケースがあり、取引が長い場合には過払い金が出ている可能性があります。
②リボ払い取引(キャッシングリボ払い)
これに対し、キャッシングで借りたお金をリボ払いで返済するキャッシングリボというものもあります。リボ払いとは、毎月の利用額にかかわらず、毎月一定の金額を返済する支払方式のことです。ただ、ジェーシービーの場合このリボルビング払いについては、当初より18%以下の金利が設定されていましたので、原則として過払い金は発生しません。
ただし、これはリボ払い取引のみを行っていた場合の話です。通常JCBカードのキャッシングは「1回払い」と「リボ払い」とが選択でき、これらを併用することもできます。よって、2種類の取引を同時並行して行っていた方も多くみられます。このような場合、マンスリークリア取引とリボ払い取引とを一連一体のものとして(つまり1つの取引とみなして)引き直し計算をすると、過払い金が発生する場合が多いのです。
まとめると次のようになります。
・「マンスリークリア取引」⇒過払金が発生する可能性がある
・「リボ払い取引」 ⇒この取引だけを行っていた場合は、過払い金は発生しない。しかし、マンスリークリア取引と併用していた場合には過払い金が発生する。
よって、ジェーシービーの過払い金については、まずは自身の契約内容を確認することをお勧めします。もし契約内容がよくわからない場合には、過払い金返還請求を専門とする弁護士や司法書士の事務所に相談してみましょう。
⑷過払金は時効で消滅することがある
過払い金は完済した時から10年経つと時効により消滅してしまいます。よって、完済していない(現在も支払中)か、もしくは完済日から10年以内であれば過払い金の返還請求が可能です。
通常、自分に過払い金が発生しているのかどうかについては何もしなければわかりません。すると時間だけが経過し、せっかく高額の過払い金が発生しているのに調査した時点ではすでに時効で消滅しまっていたというケースは決して少なくありません。
シン・イストワール法律事務所では過払い金の調査は無料で行っています。ジェーシービーと過去に取引をしたことがある方は調査だけでもしてみることをお勧めします。
2.JCBに過払金を請求する場合の注意点
ジェーシービーに対し過払い金返還請求をする際には、以下の点に注意が必要です。
⑴ショッピング利用分では過払い金が発生しない
ジェーシービーで買い物(ショッピング立替払い)をした場合には、過払い金は発生しません。これらのショッピング利用分は貸付金ではなく「立替金」であり、支払った「分割手数料」も利息ではないことから、過払い金というものが発生しないのです。
⑵支払途中で過払い金を請求した場合には信用情報に載る
ジェーシービーとの取引で約定債務があり、現在、支払途中の状態で過払い金返還請求をすると基本的には信用情報に載ってしまいます。ただ、キャッシング残があり引き直し計算をした結果、過払い金が発生しているような場合には信用情報に載ることはありません。なぜなら、適法な利息計算をした結果、過払いになるということは、そのキャッシング取引については、そもそも債務は無かったといえるからです。
⑶過払い金はショッピング残債務と相殺される
ジェーシービーでショッピングの利用がある場合には、キャッシングで発生する過払い金はショッピングの残高(債務)と相殺されることになります。ショッピング取引はキャッシング取引とは別個の取引だからです。これは他の信販会社についても同じです。
よって、ショッピング利用分の約定債務が残っている場合,キャッシングで発生した過払金で相殺してもまだ残債務が残ってしまう場合には,やはり信用情報に載ってしまいます。
3.過払い金返還請求に対するジェーシービーの対応
過払い金の返還請求に対するカード会社の対応は、各会社によってさまざまです。
株式会社ジェーシービーは、世界の5大クレジットカードブランドのひとつであり、加盟店数も日本国内ではトップクラス。国外でも2100万店を超えるほどに急成長を遂げています。よって、過払い金返還請求についても「良心的な対応」をする会社といえ、交渉についても比較的スムーズです。また倒産等のリスクも低いといえます。
4.回収までにかかる期間・回収率
⑴ 回収の方法
過払い金返還請求をすれば、カード会社などがそれをそのまま支払うとは限りません。したがって、過払い金返還請求をした後、相手方の会社と返還額や支払日について交渉をする必要があるのです。ここで、交渉の方法は2つあります。
1つは、裁判を提起したうえで、その手続きの中で解決する方法、もう1つは、裁判を介さずに話し合いで解決する方法(任意交渉)です。前者では、判決を得て強制的に過払い金を支払わせる場合と返還額や支払日について当事者で合意する場合(訴訟上の和解)の2通りあります。通常、過払い金返還を求める裁判では、訴訟上の和解で終わる場合がほとんどです。結局、裁判をしてもしなくても相手方会社と合意して終結するのが一般的ということになります。
ここで、裁判をした場合(訴訟上の和解)としない場合(任意交渉)との違いについていうと、一般的に、任意交渉で解決した方が回収までにかかる期間は短く済む反面、過払い金の返還率は低くなり、他方、裁判をしてその中で交渉すると手続きにかかる期間が長くなりますが、返還率が高くなります。過払い金返還請求を行うにあたって、任意交渉によるのか、裁判を提起して交渉するのかについては、弁護士と相談して選ぶことができます。
なお裁判をする場合であっても、弁護士が代理人として裁判対応しますので、ご本人が出廷するようなことはほぼありませんのでご安心ください。
⑵ 回収にかかる期間
ジェーシービーの場合、任意交渉による解決では返還合意に至るまでの期間は1週間~1ヶ月です。また、交渉開始後から着金までの期間としては平均2ヶ月です。
他方、裁判を行った場合に訴訟上の和解が成立するまでにかかる期間は、提訴してから1~1.5ヶ月位です。また、着金までの期間としては合意後1.5~2ヶ月です。
(以上シン・イストワール法律事務所の実績)
一般的に裁判をした場合は時間がかかると言われているようですが、上記のとおり、それほど長期間になることはありません。
⑶ 回収率
過払金請求の広告サイトなどでは、貸金業者の過払い金回収率について「過払い金返還率~%」といった記載がよく見られます。しかし注意すべきことは、そもそも「~%」というのは何をもとにした割合なのかという点です。
通常、過払い金にはそれが発生した時からの利息(過払利息)が年5%の割合で付加されていきます。よって、過払い金を計算した結果、過払い金(過払い元金)が200万円、その利息(過払い利息)が50万円であれば、合計250万円の過払い金(過払い元利金)を返還請求することができるのです。この250万円(過払い元利金)が「本来請求できる金額」なのです。
よって「過払い金返還率100%」と謳っていても、上記の例でいうと過払い元金(200万円)の100%なら回収額は200万円であり、過払い元利金(250万円)の100%なら回収額は250万円となります。
つまり、回収率が100%と書いてあったとしても、それが過払い元金(200万円)をもとにしているのであれば、正確な回収率に計算し直すと、実際には80%(200÷250)にしかならないと言うことになります。
ですから、過払い金の広告サイトの回収率については、必ず何をもとにした割合なのかという点を注意して見るようにしてください。数字のマジックに惑わされないようにしましょう。
では、本題に戻しましょう。
ジェーシービーの場合、シン・イストワール法律事務所の実績では過払い金回収率は以下のとおりです。
裁判外の任意の交渉の場合 (任意交渉) | 過払い元利金の約70~80% ※取引の内容に争点がない場合 |
裁判をした場合 (訴訟上の和解) | 過払い元利金の約90~95% ※取引の内容に争点がない場合 |
⑷ まとめ
以上のことからすると、裁判をして過払い金を回収した方が回収率は高くなります。回収までにかかる期間については、任意交渉の方が若干早いといえますが、その差もわずかです。しかも裁判自体は和解によってすぐに終わるので、訴訟上の和解後、着金予定の過払い金を待つだけの期間が1~2ヶ月かかるだけです。
よって、どうしても今すぐお金が必要ということでないのであれば、回収率の高い方法、即ち、裁判を提起して回収する方法をお勧めします。
5.争点(ジェーシービーが特にこだわる争点)
⑴ 過払い金の額は何で決まるのか
一般的に過払い金の額は何によって決まるのでしょうか。
過払い金とは「払い過ぎた利息」のことなので、法律の上限を超えた利率を前提に「どれだけ多く返済を行ったか」で決まることになります。
つまり、取引の額(借入額や限度額)が多いほど取引の回数(返済の回数)が多いほど取引の期間(違法利率で取引した期間)が長いほど、過払い金の額は多くなるといえます。
しかし、上記以外でも過払い金の額が左右されるポイントがいくつかあります。場合によっては過払い金が消滅することもあります。これを「過払い金の争点」と言いますが、以下ではジェーシービーがよく主張してくる争点について詳しく説明していきたいと思います。
⑵ 取引の分断
取引の途中にいったん約定債務を完済することはよくあることです。例えば、将来借り入れするかもしれないけれど、当面は借入する必要性がないなどの理由で、いったん完済し、キャッシングカード(会員カード)を保有したまま数年ほど経ってキャッシングを再開するような場合です。
このようなケースで過払い金を請求すると、ジェーシービーなどのクレジット信販会社は「取引が分断している」などと主張してきます。その結果当初計算した過払い金の額より少ない額の提案をしてきます。
どういうことかと言うと、いったん完済してから取引(借入)の再開をするまでに「取引の空白期間」が数年の長期に及んでいるので、この空白期間の前後で取引は2つに分断されると主張するものです。その結果、空白期間前の取引は完済した時から10年経っているので時効で消滅しており過払い金が発生するのは空白期間後の取引分についてのみだとして、当初の計算より減額した過払い金額で和解提案をしてくるのです。
このように完済したことによって取引が2つに分断されると、取引ごとに過払い金を計算することになるので1つの取引として計算したときより、過払い金の額は少なくなります。場合によっては空白期間の前の取引は時効で消滅したり、空白期間の後の取引が法定内の利率のため過払い金が発生しない取引だったりして、過払い金が0円というケースもあります。
この争点のことを「取引の分断」と言いますが、ポイントは「いったいどれ位の空白期間で取引が分断されるのか」という点です。その判断については、空白期間だけで単純に判断することはできないのですが、ジェーシービーとの交渉場面に限定していうと、空白期間が3年を超えると分断を認めざるを得ないと考えてよいでしょう。
この点シン・イストワール法律事務所では、過払い金請求事件の裁判を相当数扱ってきた実績があり、どのような事情で取引が分断となるのか、また、裁判所がどのような点を重視して分断の有無を判断するのかについて豊富な情報蓄積がありますので、分断の争点があるケースについてはお気軽にお問い合わせください。
⑶ マンスリークリア取引
マンスリークリア取引とは、翌月1回払い方式のことです。この取引を繰り返すと毎月の返済額は借入れした分だけ増えるので、この点で毎月の返済額が一定であるリボ払い取引とは異なります。
ところで、過払い金を計算する際リボ払いの取引では、過払い金充当合意が認められるので、すべての借入と返済を一連一体の取引(つまり1つの取引)とみなして過払い金を計算します。かつてはマンスリークリア取引についても、過払い金充当合意があるとされ、個々の取引(1回ごとの借入と返済)に分解せずに、すべてを一連一体の取引とみなして過払い金を計算していました。
しかし最近、JCBやクレディセゾンなどが、マンスリークリア取引は個別の取引(1回ごとの借入と返済)に分解されるので、過払い金充当合意は認められない、よって一連計算することはできず、過払い金についても個別に(バラバラに)計算すべきであると主張するようになりました。その結果、過払い金の額は一連計算したときに比べて少なくなってしまいます。また、過払い金の消滅時効についても、分解した個別の取引の返済時点から進行することになるので、返済後10年を経過したものは順次時効消滅していくことになります(一連計算の場合、取引が継続する限り時効は進行しません)ジェーシービーやクレディセゾンなどがこの争点を強硬に主張する目的は、まさにこの点にあるのです。
JCBは、過払い金の返還交渉をした際、マンスリークリア取引については必ずと言ってよいほどこの争点を持ち出してきます。そのため裁判外の交渉においては、ある程度の譲歩が必要になってきます。
ただ「マンスリークリア取引は個別計算をすべき」との業者の主張に対しては十分反論する余地があります。論拠の1つは、最高裁判決平成15年7月18日です。この最高裁判決は「同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付けが繰り返される金銭消費貸借取引」であることのみを根拠に、発生した過払い金をその当時存在する外の借入金債務(利用分)へ充当することを認めているからです。つまり、マンスリークリア取引も繰り返し継続していれば、一連計算するのに過払い金充当合意の存在は不要だとしているのです。
さらに近時、マンスリークリア取引についても一連計算することを認める裁判例(高松高等裁判所:平成31年2月1日判決)も出ており、裁判を提起して、この争点について争って過払い金を回収するのであれば、一連計算が認められる可能性は高いといるでしょう。
シン・イストワール法律事務所では、この争点についても熟知しておりますので、JCBカードのマンスリークリア取引の経験がある方はぜひ当事務所にお問い合わせください。
⑷マンスリークリア取引とリボ払い取引との一連計算
これはマンスリークリア取引とリボ払い取引とを同時並行して行っていた場合に、これらを別個のものとしてそれぞれ過払い金を計算するのか、それとも一連一体のものとして過払い金を計算するのか、という争点です。
もし2つの取引を一連のものとして引き直し計算することができれば、リボ払い取引が法定内金利であったとしても、結果的に過払い金が発生することになるのです(マンスリークリア取引の返済がリボ払い取引に充当されるからです)
この争点について、ジェーシービーやクレディセゾンなどのクレジット会社は、リボ払い取引には過払い金充当合意が認められるのに対し、マンスリークリア取引には過払い金充当合意が認められないので、両者を一連計算(過払い金充当計算)することはできないと主張します。
このような主張に対しては、前記⑶で述べたような主張をして、マンスリークリア取引についても一連計算が可能であるから、これをリボ払い取引と一連計算することもまた可能であるなどと反論していくことになります。
6.まとめ
以上みてきたように、ジェーシービーは財務状況に問題がなく、過払い金の返金対応も良心的ですので、2007年(平成19年)6月16日以前からジェーシービーカードを利用しいる方は、過払い金の調査だけでもトライしてみるべきです。シン・イストワール法律事務所では過払い金の調査は無料で行っています。
とくに完済した方については、完済してから10年が過ぎると過払い金は時効消滅してしまうのでぜひ今すぐ調査すべきです。また今現在支払中の方にあっては、過払い金によって今の債務が無くなる(もしくは減額される)可能性が高いと言えるので、やはり今すぐ調査することをお勧めします。調査の結果過払いとなっていれば、過払い金の回収を行ってもブラックにはなりません。
なお司法書士に調査を依頼する場合はご注意ください。過払い金を調査した結果その額が140万円を超えていた場合、司法書士は法律上、返金交渉をすることが禁じられています(弁護士法72条)。二度手間にならないよう最初から弁護士事務所に調査を依頼しましょう。