実は自分でもできる!?個人再生手続きを自分でやってみる方法を弁護士が解説!

個人民事再生の手続きを自分だけで行うことは可能でしょうか。という質問をたまにいただきます。もちろん、本人が申し立てることが前提ですから、弁護士などの代理人を立てずに行うことは可能です。

少し難しいですが興味のある方もいらっしゃるので、自分だけで個人再生の手続きを行う場合の手順を解説していきたいと思います。

まず、本当に個人再生の手続きが最適なのか?

まずは、本当に個人再生の手続きでよいのかどうかの検討が必要です。あくまで個人再生は借金を支払っていく方向の整理です。自己破産ができない理由がないのであれば、自己破産する方が、再スタートが切りやすいと言えます。逆に、借金の額がそれほど多くないのであれば、簡易な手続きである任意整理をした方がよい場合もあります。

どの手続きが最適かについては、その人の借金の額、資産や収入の状況、住宅の有無、その他の事情を総合的に検討して判断するものです。また、自己破産、個人再生、任意整理の3つの違いに関する法的知識も必要です。

よって、本当に個人再生の手続きがベストなのかどうかについては、債務整理に詳しい弁護士や司法書士などの無料相談を通じて、予め債務整理に詳しい専門家の意見を聞いた方が良いでしょう。

さあ個人再生をやってみよう!提出書類を準備する

 再生手続開始申立書を作る

まず個人再生には2種類あることを確認しましょう。

「小規模個人再生手続き」か「給与所得者等再生手続き」どちらで申し立てをするか検討する必要があります。それぞれ申立書の書式が異なるからです。

2つの手続きの違いは、簡単に言うとあなたが作った再生計画案の成立に「お金を貸している債権者の皆さんの同意」が必要か否かです。

というのも小規模個人再生手続きにはお金を貸りた債権者の過半数以上の同意が必要なのです。

つまり、たくさんお金を貸している大口の債権者がいて、その債権額が総額の1/2を超えている場合、その債権者が反対!と異議を出せば小規模個人再生手続きはできないことになります。

1社に大きく借金がある場合、給与所得者等再生手続きを選択した方が良いケースが多いです。ざっくり申し上げれば「給与所得者等再生手続き」は、債権者の同意が必要ない代わりに小規模個人再生より高い弁済額になってしまう可能性があります。

裁判所が決める「最低弁済額基準」と「可処分所得の2年分」のどちらか多い方が「最低弁済額」となります。

申立書はひな形(裁判所のHPからダウンロードできます)がありますので、この書式に沿って記入をしていけば完成します。申立書には住民票・戸籍謄本を添付します。

このパートで重要なのは「再生計画案作成についての意見」部分です。ここには計画弁済予定額を記入する必要があり、個人再生の肝です。

この金額が、月々の分割で納める金額の基準となりますし、十分検討しないまま金額を書き入れて、たびたび変更するということになれば、裁判所の不審を買うことにもなりません。

収入及び主要財産一覧を作ろう

 「収入及び主要財産一覧」の収入欄には、月額の給与と賞与を別々に記載して、最後に年収を記載します。主要財産については、土地・建物などの不動産のほか、現金、預金、株式等の有価証券などの有無及び金額を記載します。

報告書及び財産目録を作ろう

報告書には、過去10年間の経歴、家族関係や住居に関する状況、個人再生手続きを申し立てるに至った事情、財産の詳細などを記載しなければなりません。財産の詳細については、「財産目録」というものを作成します。報告書や財産目録は裁判所で指定された書式を使用することになるので、その書式に沿って記載すればよいのですが、すべて裏付け資料を用意しなければなりません。簡単に言えば通帳の金額を証明するためには通帳のコピー、生命保険の解約返戻金がある場合、解約返礼の計算書などのコピーが必要になります。

また、個人再生で使われることの多い、住宅ローンは継続して支払いつつ、他の借金を圧縮する「住宅ローン除外条項」を利用する場合には、不動産の査定書も必要です。

その他、賃貸借契約書・給与明細・源泉徴収票・確定申告書・課税証明書などでしょうか。

その他財産については、有価証券、退職金試算書、不動産登記簿謄本、車検証などの添付も必要です。

債権者一覧表を作ろう

「債権一覧表」には、お金を借りていた全ての会社を記載します。

債権者名(会社名、支店名)、債権者の住所、債権の発生原因、債権額などを記載します。これらの情報を正確に記載するには、すべての債権者に連絡をして「債権届」という書面(債権者の情報や債権額が記載されています)をください、と漏れなく連絡し取得する必要があります。

個人再生手続きは無担保の債権の総額が5000万円を超えてないことが条件です。もし、抜け落ちていた債権者の債権額を追加した結果、総額が5000万円を超えるようであれば個人再生手続き自体ができなくなるので注意が必要です。

再生計画案を作成してみよう

裁判所に上記、再生手続き開始申立書を提出すると裁判所が個人再生手続きの開始決定を出します。

そうすると分割予納金の積立を開始します。これは個人再生した時に本当に貴方がお金を払い続けられるのか、というテストも兼ねられています。ここで支払いが遅れてしまうことがあると個人再生が頓挫しかねません。

支払いが数回終わった頃、次に「再生計画案」を裁判所に提出しなければなりません。再生計画案とは、要は、これこれの条件でこのような計画で債権者にお支払いしますという支払計画の案のこと。もちろん、この計画案は認可されれば、それを実行していかなければならないものです。自身の財産と今後の収入見込み、家計状況を踏まえ、「約束は必ず守る」という観点で、再生債権総額をどのように分割して支払っていくかを記載してください。

実現可能性のない再生計画案では、個人再生委員の同意を得られず、ひいては裁判所の認可ももらえません。また、清算価値保障の原則といった制限もあります。

清算価値保障の原則とは、「再生計画を立ててお金を払う弁済率」が「自己破産における場合の配当率以上」でなければならないとする原則のことをいいます。

どういうことかというと、自己破産をした場合、その時持っている財産は原則全て処分し、破産債権者に配当されることになります。

配当率とは、借していたお金、債権額に対する実際に戻ってくる、配当額の割合です。個人再生をする場合には、自己破産をしたと仮定し、どのくらいの配当(お金を貸していた人たちに返済する)がなされていたのかを想定して、個人再生をする場合、その配当率以上の弁済率でなければならないとするのが清算価値保障の原則です。

簡単にいえば、個人再生では自己破産をした場合の配当額「以上」の金額は弁済しなければならないということです。

お金を貸している側の目線から考えるとわかりやすいです。個人再生は自己破産と違い、全ての財産を処分する必要のない手続きなのに、自己破産より受け取れる金額が少ないとなると、自己破産してもらった方が戻りが多い訳ですから、誰も個人再生に協力してくれません。

これらに抵触しないような計画を立てることが必要です。

個人再生委員と予納金

個人再生手続きでは、裁判所が個人再生委員を選任することがあります。個人再生委員とは、申立人(債務者)の個人再生手続きについて「指導・監督」する立場にあるもので弁護士から選任されます。

個人再生委員が選任されるかどうかは、裁判所によって異なります。例えば、東京地裁では、個人再生手続を弁護士に依頼していても、必ず個人再生委員が選任されますが、横浜地方裁判所、千葉地方裁判所などでは、債務者に弁護士が就いていれば、個人再生委員が選任されることはほとんどありません。

しかし、債務者自身が個人再生手続を申立てた場合には、個人再生委員が必ずといっていいほど選任されています。

個人再生委員が選任された場合には、個人再生委員への報酬18万円前後が必要となり、申立後、この金額を納めなければなりません。

東京地方裁判所では、分割して納める運用となっていますが、その他の裁判所では一括で納付する場合が多いと言えます。

自分で個人再生手続きをやる場合のメリット

自分で個人再生手続きを行った場合の最大のメリットは費用が安くおさえられる点です。

しかし、本人が申立てをした場合は、必ず民事再生委員が選任されるので、その報酬18万円前後の支払を覚悟しなければなりません。弁護士が申立てを代理した場合でも、民事再生委員を選任する裁判所(東京地裁)もありますが、ほとんどの裁判所では弁護士がついていれば民事再生委員を選任する例はすくないです。

注意が必要なのは、司法書士に依頼した場合です。最近の司法書士は「書類作成」という名目で個人再生の申立てを受任し、弁護士と変わらない額の費用をとります。しかし、司法書士は、弁護士のように申立代理人にはなれないので、司法書士に依頼しても「本人申立て」に変わりはなく、必ず民事再生委員が選任されるのです。すると、司法書士の費用に加え、民事再生委員の費用までかかってしまうことになり、最も高くつく結果となります。

自分で個人再生手続きをやる場合のデメリット

①手間と時間がかかる

自分だけで申立てに必要な書類と資料を作成・収集することは相当な手間となります。また、適切に記載するには法律的な知識も必要なので、その都度、書籍やインターネットで調べる必要があります。申立書類に不備があれば、裁判所から補正や追完の指示が出て、いちいちそれに対応しなければなりません。裁判所とのやりとりは平日の日中(9時~17時)に限られるうえ、追加指示された書類等は郵送するか、持参しなければなりません。つまり、お仕事をされている方は、仕事中にこれらを行うことになるでしょう。よって、仕事の合間に書類の収集や・作成に膨大な時間を割くことは非常に困難ではないかと思います。

他方、弁護士や司法書士などの専門家に依頼した場合には、これらをすべて任せられるというメリットがあります。

このように自分だけで個人再生手続きをやると、どうしても申立てまでに時間がかかってしまいます。ケースによっては、時間がかかることで個人再生自体ができなくなる場合もあります。例えば、住宅ローン除外条項を利用するケースで、保証会社の代位弁済があった場合には、代位弁済後6か月以内に申立てをしないと、個人再生自体が認められなくなるのです。

②支払を実質的にストップできない

弁護士や司法書士に個人再生手続きを依頼した場合、債権者に受任通知を出してくれるので、督促がストップし、支払が猶予されます。

貸金が遵守すべき法律である貸金業法には、「弁護士や司法書士が債務整理に介入した場合、貸金業者は債務者に督促してはいけない」と規定されているからです。
違反すると罰則や行政指導があるので、貸金業者はこの取り立て規制を守ります。

よって、この間、債務者は支払が猶予され、生活の立て直しや弁護士費用などの捻出ができるのです。

しかし、債務者が自分で債務整理をするときには、このような規定が適用されません。自分で個人再生手続きを始めたとしても、支払督促書類は止みません。

債権者は、実際に個人再生の申立てがあるまでは、今まで通りの返済を求めるでしょうし、場合によっては期限の利益を喪失したとして一括請求を求める裁判を提起してくるでしょう。裁判で判決がでると、給与差し押さえ等の強制執行を仕掛けてきますが、これらを止めるには個人再生の申立てをしたうえで、裁判所に認可決定を出してもらう他ありません。

自宅や職場に支払催告の電話や書面がひっきりなしに来て、しかも仕事の合間に個人再生に必要な書類を収集・作成する日々が続くのです。挙句の果てには裁判所から訴状が届き、出頭する羽目に。もし、自分で個人再生手続きをやるならば、このような状況は当然のことながら覚悟しておかなければならないでしょう。

まとめ

そもそも借金の返済が厳しいから個人再生手続きをやろうと考えるので、弁護士や司法書士に払う費用も抑えたいという心理はもちろん理解できます。

しかし、一生に一度あるかないかの重大な場面ですから、ミスは許されません。

費用についても、自分で個人再生手続きをやれば必ず個人再生委員の報酬がかかるので、弁護士に依頼する場合と比べて、格段に費用が抑えられるわけでもありません。しかも、民事再生委員の報酬を納める場合、ほとんどの裁判所が一括納付です。これに対し、弁護士費用ならどの事務所も分割払いに応じてくれますし、受任通知を送付後、督促がストップしている間に弁護士費用を積み立てるようになっています。

お金に以外にも、時間、労力、専門家に全て任せるという安全と安心感なども総合的に考慮したうえ、自分だけでやるのか、専門家に依頼するのかを判断することが大切です。

実際、自己破産にしても個人再生にしても、弁護士や司法書士などの専門家に依頼する人がほとんどです。やはり、お金の問題だけではすまされない理由があるからでしょう。

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